さて、またしても恥さらしになる可能性は、大ではあるが。

放蕩息子と青瓢箪さまのところで知った、このネタに思いっきり釣られます。

外国人参政権をめぐる長尾教授インタビュー詳報「読みが浅かった」

 これ聞きに言った記者にも、ちょっと問題がありそう。
 ではまずは、この論点を紹介していて、ネット上で楽に読めるこれをきちんと読んでおこう。

外国人参政権をめぐる論点 佐藤 令(PDF)

 さあて、始めましょう。

外国人への地方参政権付与は合憲としてきた長尾一紘(かずひろ)・中央大教授が、従来の考えを改めて「違憲だ」と明言した。

 正確には、「許容説」。
 憲法はこの問題についての判断を立法府に委ねており、法律によって外国人を排除しても、また外国人に選挙権を付与しても合憲。

−−許容説から禁止説へと主張を変えたのはいつか

民主党衆院選で大勝した昨年8月から。鳩山内閣になり、外国人地方参政権付与に妙な動きが出てきたのがきっかけだ。鳩山由紀夫首相の提唱する地域主権論と東アジア共同体論はコインの裏表であり、外国人地方参政権とパックだ。これを深刻に受けとめ、文献を読み直し、民主党が提出しようとしている法案は違憲だと考え直した」

 ツッコミ、変節はこの手合いの論議のならい。驚きはないが、

憲法解釈と政策論が必ずしもこのように対応するとは限らないPDFのP2
 ↓
鳩山由紀夫首相の提唱する地域主権論と東アジア共同体論はコインの裏表であり、外国人地方参政権とパックだ。これを深刻に受けとめ、文献を読み直し、民主党が提出しようとしている法案は違憲だと考え直した


と、憲法論と政策論を政権交代で突如リンクさせたことに、ぽかーん。
 なら、平成12,16,17に出された、「永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権の付与に関する法律案」の手合いについてはどーだったんだろう?

 あとこれで民主党が〜ブサヨが〜とか言っている人。今回だそうとしているのが初めてではないこと(&今迄出していたのはどこの党だったのか?)は、承知済みですかな?

1つは状況の変化。参政権問題の大きな要因のひとつである、在日外国人をめぐる環境がここ10年で大きく変わった。韓国は在外選挙権法案を成立させ、在日韓国人の本国での選挙権を保証した。また、日本に住民登録したままで韓国に居住申告すれば、韓国での投票権が持てる国内居住申告制度も設けた。現実の経験的要素が法解釈に影響を与える『立法事実の原則』からすると、在日韓国人をめぐる状況を根拠とすることは不合理になり、これを続行することは誤りだと判断した

「立法事実の原則」というのは

 手元の

憲法 第四版

憲法 第四版

によるとこれかな?

しかし憲法事件では、さらに、違憲か合憲かが争われる法律の立法目的および立法目的を達成する手段(規制手段)の合理性を裏付けえる社会的・経済的・文化的一般事実が、問題になる。法律が合憲であるためには、その法律の背後にあってそれを支えている右のような一般事実の存在と、その事実との妥当性が認められなければならない。この事実を「立法事実」という。ただ憲法と法律の条文だけを観念的に比較して違憲か合憲かを決める憲法判断の方法は、実態に適合しない形式的・観念的な説得力の弱い判決になる可能性がある
(P366)

 なる。ただ、これでいくと「現与党(のうちの民主党)の法案では、違憲の可能性が高い」という余地があるのはわかったけど、「旧与党の法案に差し戻せ!」とか「だめだ!もっと良い法案を出して出直してこい!」とか言う余地もあるわけで、結局禁止説に戻った理由はワカラン。

理論的反省だ。法律の文献だけで問題を考えたのは失敗だった。政治思想史からすれば、近代国家、民主主義における国民とは国家を守っていく精神、愛国心を持つものだ。選挙で問題になるのは国家に対する忠誠としての愛国心だが、外国人にはこれがない。日本国憲法15条1項は参政権を国民固有の権利としており、この点でも違憲

なるほど。

憲法第15条第1項の国民の公務員の選定罷免権は国民主権原理から派生するのに対して、第93条第2項の住民の地方選挙権は地方自治の本旨から派生するとして、両者を分けて考える。
平成7年最高裁判決も、地方選挙についてのみ参政権の付与を許容している。
また、「自治体の高権行為には、国家的正当化のほかに地域団体的正当化が必要である」とする「二重の正当化」論を援用し、国民主権主義は、上からの国家的正当化の連鎖が切断されないことを要請するが、地方議会の条例制定権は「法律の範囲内」で行うこととされているので、外国人が地方議員選挙に参加しても、国家的正当化が破られることはない。
(PDF P9)

と、あったここの部分をどう訂正し修正したのかが、正直わからない。また、愛国心云々も思想信条の自由に引っかかりそうだし(あ、もちろん入国許可の裁量部分は、お国が持っていることは承知済み)瀧川裕英氏じゃないけど、
「永住国に忠誠を誓う外国人もいるし、外国政府と通謀する者は同国人の中にもいるという反論が可能である」
(PDF P6)

許容説の一番最先端を行っているドイツでさえ、許容説はあくまでも市町村と郡に限られる。国と州の選挙の参政権ドイツ国民でなければ与えられない。

 説、ではなくて、すでに実務レベルね。

ドイツ
(EU加盟国)
国政=参政権・被参政権ともに×
地方=参政権・被参政権ともに○・州の参政権は対象外で、郡及び市町村のみ。バイエルン州及びザクセン州は首長の被選挙権を除く。
(非加盟国) 全て×
(PDF P16)

 5年間真っ当に住んでたら地方選挙権&被選挙権とれてまうオランダなどの立場や如何に(あ、饗庭氏がアップを開始してる…)。

 結論から言うと、元々長尾先生が持っていた持論=
「第93条第2項の住民の地方選挙権は地方自治の本旨から派生」
をどう禁止説に沿うように修正したのかがわからない。

2月に論文を発表し、許容説が違憲であり、いかに危険なものであるのか論じる

で、どう論拠を変更していったのかを読まないことには、話が進みそうもない。


 もはや多数説たる地方許容説を突き崩せるかどうか。
 もしも百地教授らの否定説をさらに補強する論(もしくは許容説を、いままで否定説が述べてきた論の他に突き崩す論)が、出なければ、「ありゃー、地方許容説を採る先生が一人減っちゃったかー」で終わり。
(ただ、このインタビュー記事を見る限りにおいては、どうも、後者に終わる可能性が…)


 もういっちょ。帰化申請のたやすさ&重国籍問題なども勘案せねばイケンのに、そのあたりをどうすりゃあいいのか。
(たとえば米国では生地主義とるから、両親ともに外国籍でも子は(米国で生まれれば)米国籍をも保有。)
 ちょうど「おとなり日記」にも表示されていることですし、幸福実現党のいう移民政策では、このあたりをどう考えているのかいっちょ伺いたいところ。


 そのあたりの議論が全くもって進んでいない以上、政策論での地方参政権のあーだこーだは、述べることは難しい。