続:ニセ科学バスターと、メディア・リテラシーの親和性

 ニセ科学バスターと、メディア・リテラシーの親和性、の続き。

 毎日新聞オンライン版によるが、本当に多数の養子縁組をした上で、子ども手当を申請したのが出たようで。

子ども手当:韓国人男性が554人分申請 孤児と養子縁組

 兵庫県尼崎市に住む50歳代とみられる韓国人男性が、養子縁組したという554人分の子ども手当約8600万円(年間)の申請をするため、同市の窓口を訪れていたことが分かった。市から照会を受けた厚生労働省は「支給対象にならない」と判断し、市は受け付けなかった。
(略)
 今回のようなケースについては、国会審議で野党から問題点として指摘されていた。手当の支給要件は(1)親など養育者が日本国内に居住している(2)子どもを保護・監督し、生活費などを賄っている−−の2点だけ。母国に子どもを残してきた外国人にも支給されるうえ、人数制限もなく、機械的な線引きが難しいためだ。こうした盲点を突かれ、ネット上では「100人を養子縁組しても手当はもらえる」といった書き込みや批判が絶えない。同省は今月6日、ホームページに「50人の孤児と養子縁組をした外国人には支給しない」と記したものの、根拠は「社会通念」とあいまいだ。何人以上なら不支給という明確な基準はなく、同様の申請が各地で続発しかねない状況となっている。

 尼崎市の男性は、子どもへの送金証明や面会を裏付けるパスポートのコピーなど外国人に求められる書類をそろえており、事前に調べてきた様子がうかがえた。市の担当者は「可能ならもらおうという意欲を感じた」と話している。
参考

 ただ、結論は記事にもあるように、厚労省のFAQ の範囲でも十分な回答で却下、と。

 これでは、少なくてもこの手法で子ども手当を受給するのは、きわめて困難だ、と、証明された。
おとなり日記に表示されていた、momentumさまのこの見解に、同意。)

この種の流布には「嘘くさいけどありえそう」という不確実性が大事なのだけど,こうして500人以上も養子縁組していっても受理されないという事例がはっきり出てしまったからには,もうこれ以上は流行らなくなるのかもなと悲観的に見ている.そもそもあそこの人たち,飽きっぽいしね.

次は外国人参政権での現住所問題あたりで1ブームありそうな予感.
参考

 あとは、新聞記事では曖昧に書かれてしまってはいるが、判断方法は厚労省から示されている。(PDF)児童手当の時は書類も統一されていないとか、確認の方法が緩かったとか書かれてるわけで、不正受給する気ならむしろ児童手当時代にやっておいて…というかこんなミエミエの盲点、突破すれば確実にあっという間にディフェンダーに囲まれて突破不能、と。

 そして、この話の結論は、記事の文言を借りれば、

「盲点は確かに空けてあるが、判断基準は児童手当時代よりも厳正に対処する、としている。」

 国籍法改正の時にも思ったけど、日本のお役人を舐めすぎ。

 さて、これを受けてまたしてもデマが発生したようで。

数十〜200人単位の不正受給デマ

 尼崎市での騒動がメディアで流れると、ネットで今度は、横浜と北海道では既に200人単位の養子縁組をした韓国人に子供手当受給が決まった、という噂が。

東大阪市の職員だけど、こっちにも金曜に45人分(用紙3枚)の申請に来た韓国人がいたよ。もちろん受理された」

などの書き込みも現れた。本当なのか東大阪市に問い合わせてみると、

「何十人単位などの不自然な申請は来ておらず、現在はこれまで寄せられた申請を受理するかどうかを決めている最中です」

ということだった。支給が決まったという通知はまだしていないという。横浜市は申請を郵送で受け付けているが、問題となるようなものは今のところ見当たらない、ということだった。北海道庁も、「申請は市町村単位で受け付けているが、問題となる申請があったという相談は一件も来ていない」。全部デマだったわけだ。

厚生労働省によれば、申請に問題があると相談されたのは尼崎市の1件のみ。
参考

「社会通念」というフワフワした文言は、むしろ厳正側に派手に倒れて「ヘタをすれば社会通念を超えて、厳しいものになる」。
(実際「非実在青少年」問題は、それを非常に恐れているわけだが。)
 こういう事件やデマが出たらなおのこと。おそらく真っ当に暮らしている人でも、これだもん。

「何でもらえないの…」

 「これだけではお子さんの面倒を見ているってわかりませんね」

 外国人登録者数が約1万8千人の東京都豊島区。今月20日朝、区役所2階のカウンターで、申請に訪れた中国人女性(35)は職員の繰り出す言葉にうなだれていた。日本語が苦手な女性は約30分間、筆談を交えて説明を試みたが、最後は「じゃあ、いいです。今は時間がありません」と憤然として席を立った。

 女性は平成18年、夫や14歳の息子、9歳の娘を祖国に残したまま来日。同区池袋に住み、中華料理店で働いてきた。手当の申請に訪れたのは4回目だが、「毎回、担当が違う。言われた書類を持ってきても、『今度はこれが足りない』といわれる。自分の生活が苦しいということはないが、税金など払うべきものは払っている」と、女性は強い口調で話した。
参考

外国籍の人に児童手当の事が伝わっていなくて、子ども手当がニュース沙汰になって、初めて知った!→市役所へGO!→しかし言葉がわからない…というケースは少なくなさそう。その意味での「混乱」は確かにあるだろうけど。

と、書いたのが見事に当たってしまった…。