ただつゆまる(正露丸のはなし)

bogus-simotukareさまからの指摘。

今、市販されている「正露丸」は、終戦時に名称を「変えさせられた」のです。

征露丸は、日露戦争で盛んに使用したもので、今の、名称ですと、露西亜が正しい!になってしまいます。
この会社は、日本で唯一正統な名称の征露丸を発売している会社です。
私も、購入し愛用しています。
是非、日本で唯一正統名称を使用している、この薬をご愛用下さい。

平成21年3月23日
都議会民主党 土屋たかゆき
参考


 結論から言うと、

  • 「太平洋戦争後、『正露丸』に改めるように、行政指導をしたのは間違いないが、実は日露戦争後から『せいろがん』を作る業者は乱立し、商標権の問題等で、昭和初期の時点で『正露丸』としたものもすでにあり、『名前を変えさせられた』というのは、針小棒大。」
  • 「日本で唯一正統な名称の征露丸というが、日本医薬品製造株式会社もまた、乱立した『せいろがん』メーカーの一つでしかない」

(しかし、創業明治22年だからいいようなものの、これで創業が日露戦争のはるか後だったら、大笑いするところだった。)

  • 「『今の、名称ですと、露西亜が正しい!』とあるが、商標権の混乱や行政指導で『せいろがん』に呼び名が一緒&漢字も似てる、と、改名した結果であって、それは無理筋の解釈」


 PDF になるけど、「正露丸」はもはや普通名詞で商標ではない、とした裁判の判例がここに

日露戦争後、帰還将兵により、戦陣薬「征露丸」の名称と、薬効が口コミで広まる。
征露丸の製造販売と名称の使用が民間の製薬業者一般に開放された。
  ↓
※明治、大正の時代を通じ数十名に達し、どの業者の製品も「征露丸」の名称で販売されていた。
  ↓
明治38年鳥栖製剤合資会社が、「征露丸」の商標の登録を得る。
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大正11年頃、共同出資者(現:ラッパのマークのあの会社)が「征露丸」商標使用の他の業者に対し商標権侵害を理由に禁圧手段に出る
  ↓
大正13年、同業者から「征露丸」の登録無効の審判が請求
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※大正15年6月28日大審院において、
「日露間の平和回復後は、その語意にてらし国際間の通義に反し秩序を紊るものであるとの理由で、これを無効」
とした抗告審判の審決が是認され、同商標権は効力を失った。
  ↓
※業者の中には、右判決の趣旨を汲んで「征露丸」の名称の使用をやめ「戦友丸」「平和記念丸」などの別名に変えるところも出た。
(包装外箱等に「旧名称征露丸」、「通称征露丸」などの表示を添え、従来の征露丸と同一のものである、と表示)
監督官庁の行政指導により、「セイロ」「セイロ丸」等の仮名文字に変えたり、「征」の字を、これと呼称をおなじくし外観も近似する「正」の字で置きかえ「正露丸」の名称を用いるものが圧倒的に増加。

と言うことは、

  • 行政指導は、確かに太平洋戦争後にもあったが、大正末期〜昭和初期にもあった。
  • 商標権もさることながら日露間の戦争状態の終結とともに、「征露丸」はふさわしくない、との理由もあった。
  • そうでなければ大正末期〜昭和初期に、「戦友丸」「平和記念丸」なんて名前が出るわけが無かろう。

Q.E.D.

正露丸」は、バイエル=レヴァークーゼン、もとい、バイエル製薬の「アスピリン」同様、薬の名前が普通名詞化した珍しい例、ということか。