Der Ring〈指輪物語)
文化面に腹を立てるなどと言うのは、大人げない行為であることは承知しているつもりだった。
でも、これには腹を立てた。
【土・日曜日に書く】大阪編集長・安本寿久 消えた結婚指輪の暗示
電車内や街中で美しい女性を見ると、ついつい左手の薬指に目が行ってしまうのである。指輪があれば何となくがっかりしてしまうし、なければそこはかとなくうれしくなる。相手が既婚であろうが未婚であろうが、何の関係もない立場と年齢であるにもかかわらず、である。
ところが最近、このひそかな楽しみに水を差されている。年齢を問わず、結婚指輪が見当たらない女性が増えたからだ。反比例するように電車内などで目に付くのは男性の結婚指輪。若い人に多い上に、おそらく家事をそれほどしないためだろうが、ほとんど輝きを失っていないため、やたらに目に付くのである。
なんでも。
- 独身とばれると取引先でナメられる。
- 悪い虫をよける(笑)
- 実はそこまで意識をしていなかった。
てのが、独身モノの左手薬指の指輪の理由としてあげられてるようで。この記事書いた記者、運が悪ければ見事に騙された可能性も捨てがたく。
とすれば、「悪い虫をよける」効果が発動した可能性もあるか。
つか、「若い女性」ではなくて「美しい女性」てのが猛烈に引っかかるな。
今、たかが結婚指輪で大げさに仮説を立てるのは、民主党を中心とする連立政権になって、夫婦別姓が現実味を帯びてきているからである。結婚後も夫婦が互いに、それまでの姓を名乗れるという制度だが、妻が改姓するケースが大半だった日本では、妻が結婚前の姓で通せるようにしようというのが狙いだ。
うわー、そうきたか。指輪をしなくなった理由を夫婦別姓にもってくるか。
2000年以降、離婚件数は25万件前後で推移しているが、その中で増えているのは同居後20年以上の夫婦の離婚である。昨年は全離婚件数の15%。1975年には6%にすぎなかったが上昇を続け、昨年は5年未満、5〜10年未満に続いて3番目に多い。長く連れ添ったからといって、絆が強まったとは必ずしも言えないのだ。
べつに「別姓制度になったから、こうなった」と言うわけではないわけね。現状でも指輪しなくなったこととの相関関係は、見いだせないわけで。
同じ姓を名乗り、そろいの結婚指輪をする。古びたらあつらえ直すのもいい。そんな夫婦が多いほど、人口減少、縮小社会に向かう日本でも、未来に希望が持てる気がする。まずは形を大切に。薬指ウオッチャーのささやかな願いである。
「未来に希望が持てる気がする。」だけで指輪をすれば夫婦関係の絆が強まるのなら、というか、指輪くらいで絆が左右されるなんて、ずいぶんともろい人間関係。
そういえば、
おそらく家事をそれほどしないためだろうが、ほとんど輝きを失っていない
ちったあ家事くらい手伝えよ、若いの!とツッコミを入れかけたが、これ、前に土屋先生が「山本宣治はご家庭の婦人を性奴隷のように言っている。家庭否定論者で、コミンテルンとつるんでいる」とか言った事を、土屋先生の曲解でしかない、としたエントリを書いたことがあったけど(これね)、それを思いだしてしまったではないか。
そして失礼ながら。そして老婆心ながら。
この記者氏の一番そばにいる、結婚指輪をした女性に愛想を尽かされぬ事を。
(その女性を、世間一般では配偶者、と言いますが。)